「邪馬台国はどこですか?」鯨統一郎
邪馬台国はどこにあったのだろう?
中学校・高校の社会の授業で畿内説と九州説があることを習った人が多いだろう。
一見このような歴史系の考察本のように思えるこの作品は,実は歴史ミステリーである。
本作品ではとあるバーを舞台に4人の大人たちが歴史に関する議論を繰り広げる。
6本の短編小説からなるこの本は,どれもバーの客である研究家・宮田がとんでもない説を提唱して幕を開ける。
例えば本作品の題名にもなっている邪馬台国について,宮田は岩手県にあったという説を提唱する。学校教育を受けてきた人間なら耳を疑うような説である。これに対してバーのマスターや客たちが反論するのだが,邪馬台国岩手説にも不思議と筋の通った論理があり,読み終わるころには邪馬台国岩手県説の信者になってしまう。
そんな本である。
否定する根拠もどこかにあるのだろうが,
「この話がフィクションである保証はどこにもない」
くらいのスタンスで読み進めると一番楽しめる気がした。
また,歴史の知識がもう少しあればまた違った楽しみ方もできるのだろうなと感じた一冊だった。