T.T.の読書日記

小説,エッセイ,ノンフィクションなどの感想を書きます。

「雑談力が上がる話し方 30秒でうちとける会話のルール」齋藤孝

高校のころ,非常に面白い授業をする国語の先生がいた。その先生は授業の冒頭は必ず雑談から入る。野球観戦に行ったらホームランボールが飛んできた話や,昔の教え子の話など,授業の本筋とは関係ないのに6年以上たった今でも頭の片隅に残っている。雑談の落とし方も非常にうまく,気づいたら授業テーマに突入しているため,大抵の授業で睡魔に襲われる自分のような生徒も集中して授業を聴くことができた。そんな先生のような雑談力を手に入れるべく,この本を読むことにした。

著者である齋藤孝先生は様々なテレビ番組に出演し,にこにこと笑っている姿が印象深い。大量の知識をお持ちにもかかわらず,それをひけらかすことなく謙虚な姿勢が非常に好印象な先生である。本書の中で「雑談とは,会話を利用して場の空気を生み出す技術のことです。」とある。なるほどと思った。雑談力のある齋藤先生の周りの空気がいつも穏やかであることもうなずける。

 

本書の中で個人的に興味を持った話題をいくつか列挙する。

雑談のベストバランスは相手8対自分2

話し上手は聞き上手,とはよく言うが,雑談においても相手に主導権を渡す方が盛り上がるらしい。先ほども申し上げたように,雑談は場の空気を和ませるためにするもの。そうであれば,相手の話をうまく引き出し,相手を気持ちよくしてあげた方が場の空気もよくなっていくのは当然のことであると思った。

悪口は,笑い話か芸能ネタにすり替える

これは非常にためになった。私の周りにも悪口で盛り上がる人間は多い。その場にいない知人の話題は共感性も高く,悪口ならばなおさらであろう。しかし,陰湿な話題で盛り上がった雑談は決して後味の良いものにはならないため,いつも自分は一歩引いて会話の輪から外れてしまう。たまに,話題を変えようと,話の軸をずらすことも試みるが大抵これもうまくいかない。芸能ネタにすり替えるという案はなるほどと思った。話を急に方向転換するわけでもないので,うまく話題をそらせる気がした。今度使ってみようと思う。

困ったら「アメちゃん」。自分のコミュニケーションツールを持つ

齋藤先生はフリスクを使って会話を広げるらしい。エレベーターなどで偶然居合わせた微妙な距離感の人にはフリスクを会話の糸口とし,雑談を始める。非常に上級者な気もするが,機会があれば試してみようと思う。

ニュートラルな人は雑談がうまい

人間が集まるとどうしてもグループや派閥ができる。そんな時,グループや派閥に属さずに,全員と同じスタンスでかかわれる人が求められる。割と自分はこういう人間を目指している節がある。よくない話題に流れて行っても,その人がいるとうまく話題がスライドし,場があれることがないような存在。雑談力を磨けばこのような存在にもなれるらしい。頑張ってみようと思う。

 

他にもためになる話はたくさんあった。雑談力など,勉強するようなものだとも思わないが,このようなテクニックを知っておくと雑談の質が少しずつ向上してくような気がした。